ブランド保護の豆知識ブランド保護の豆知識各国における税関登録制度

日本企業の海外進出が進む今日、模倣品・侵害品の規模も世界的となり、もはや中国のみならず、世界各国において模倣品・侵害品が発見されています。 このような状況において、税関における水際対策は模倣品等の流出を防ぐ重要なスキームとなっています。 そこで、各国における水際対策について、知的財産権の税関登録制度の有無、ある場合はその特徴、また税関の活用方法についてまとめてみました。

国名 登録
制度
登録可能
な権利
有効
期間
職権
(ex officio)
による捜索・押収権限
担保金 効果
UAE 商標権 商標権の
有効期間
侵害品の廃棄、
輸出国への返還
アルジェリア 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
アルゼンチン 商標・著作権 2年 - 侵害品の廃棄
侵害者への罰金等
アルバニア 商標権 1年 損害補償状 侵害品の廃棄
イラク 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
インド 商、著、特、意 5年又は
権利の失効まで
侵害品の廃棄
ウルグアイ × - - - 侵害品の廃棄
エクアドル × - - - 侵害品の廃棄
エルサルバドル × - - - 侵害品の廃棄
カナダ 商標・著作権 2年 - 侵害品の廃棄
キプロス 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
キューバ × - - - 侵害品の廃棄
グアテマラ × - - - 侵害品の廃棄
コスタリカ × - - - 侵害品の廃棄
侵害者への罰金等
コソボ 商標権 1年 損害補償状 -
コロンビア - 商標権の
有効期間
- 侵害品の廃棄
サウジアラビア 商標権 1年 不要 侵害品の廃棄
スーダン 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
セルビア 商標権 1年 損害補償状 侵害品の廃棄
タイ 商標・著作権 商標権の
有効期間
損害補償状 侵害品の廃棄
侵害者への罰金等
チュニジア 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
チリ 商標権 一度登録すると更新不要 - - -
ドミニカ共和国 商標・著作権 - - - 侵害品の廃棄
トルコ 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
ニカラグア × - - - 侵害品の廃棄
ハイチ × - - × - -
パラグアイ 商、著、特 商標権の
有効期間
侵害品の廃棄
ブラジル × - - - 侵害品の廃棄
侵害者への罰金等
ブルガリア 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
ベトナム 商、著、特、意 1年 要又は信用機関
発行の保証書
侵害品の廃棄
侵害者への罰金等
ベネズエラ × - - - 侵害品の廃棄
ペルー 商標権 1年 - - -
ボスニア・ヘルツェゴビナ 商標権 1年 損害補償状 侵害品の廃棄
ボリビア 商標・著作権 1年 - 侵害品の廃棄
侵害者への罰金等
ホンジュラス × - - - 侵害品の廃棄
マケドニア 商標権 1年 - - -
メキシコ 商標権 一度登録すると更新不要 × - 侵害品の廃棄
侵害者への罰金等
モロッコ 商標権 12か月 - 侵害品の廃棄
モンテネグロ 商標権 1年 損害補償状 侵害品の廃棄
ヨルダン 商標権 商標権の
有効期間
- 侵害品の廃棄
ヨルダン(ASEZA) 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
レバノン 商標権 1年 - 侵害品の廃棄
ロシア 商標・著作権 2年 保険契約 侵害品の廃棄
侵害者への罰金等

上記のうち、知的財産権の登録制度がある国でも、登録可能なものは商標権と著作権のみとなっている国もあり、特許や意匠権まで登録できる国は少ないと言えます。また、殆どの国で押収の前提となっている権利は当該国で登録済のものです。
更に、水際対策の対象となるのは殆どの国で当該国への輸入品のみとなります。

税関登録の有効期間も、商標権の有効期限と併せている国、1、2年等短期間の国等様々です。ペルーのように毎年1月1日に更新が必要な国もあります。

国によっては担保金が必要とされますが、タイは商標権者が自己商標の保護を請求した場合に発生し得る損害に対して保証する旨の補償状の提出で足り、また、侵害品の倉庫への保管料も課されないため、比較的低コストで利用できる制度と言えます。その他、ロシアやカザフスタンのように、一定以上の金額を補償する保険契約の供託を求められるケースもあります。

ラテンアメリカにおいて、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、パナマ、パラグアイ、ペルー、プエルトトリコ、ボリビアにおいては知的財産権の税関登録制度が存在しますが、ブラジル、コスタリカ、キューバ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、ニカラグア、ウルグアイ、ベネズエラにおいて当該制度はありません。これらの国においては、税関職員が職権により疑義品の捜索・押収を行います(ハイチを除く)。
しかし実務上、税関の職員が必要な技術・知識に不足している場合が多く、商標権者が疑義品についての通過、必要情報を提供しなければ実際に動くケースは稀と言えます。

ラテンアメリカとは対照的に、中近東において税関登録制度がある国は殆どその対象が商標権であり、有効期間も多くの場合1年間となっています。サウジアラビアには知的財産権を税関に記録するための法制度はありませんが、非公式な商法記録制度があり、商標権者はこの制度を介して代理人経由で税関に非公式に商標を登録します。しかしながら、サウジには複数の税関があり、監視対象物も多いため、税関が監視できる割合は比較的小さいと言えます。また、UAEの3地域においては、それぞれ個別に登録手続を行う必要があります。

以上の状況を考えると、各国において商標登録を持つということは水際対策の重要な要素であり、海外と取引のある日本企業は自社商標・サービスの流出・流通国について一度見直し、カバーされていない国へは早期に商標を出願することをお勧めします。

税関の活用方法

マークアイでは税関、警察、司法機関等の職員を対象とし、職員の模倣品の摘発率を上げるためのセミナーを各国代理人と一緒に開催しております。現在受付中の国・地域についてはこちらです。

  • UAE
  • ヨルダン
  • スーダン
  • ボリビア
  • ウルグアイ
  • パラグアイ

セミナーに貴社が直接参加できない場合、代理人が代理でプレゼンテーションを行います。セミナーの詳細については別途お問い合わせください。
お問合せ先:info@mark-i.jp